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おきなわのくらしかた

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温度のあるうつわ

先日まで帰京していた母に、
どうしても持ってきてほしいと頼んだものがあります。
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それは、母方の祖母が生前ずっと使っていたお茶碗。
祖母の家に行くたびに、
おばあちゃんはこれでお茶を出してくれました。
その頃私はまだ若すぎて、うつわに対する興味はとても薄かった。
それでも、不思議とこのお茶碗のあるシチュエーションは
強烈に記憶の片隅に残っていて、
なぜかいつも半分より少ないくらいに
ちょろっとだけお茶が入っていました。
今思えば、うつわの軽さ、飲み口の薄さ、お茶の甘さや量が
完璧なバランスを保っていて、
何千回、いや何万回とこのうつわにお茶を注いでいた祖母の、
無意識な美のバランスだったのだろうなぁ、と思う。
母に「いる?」と聞かれて「ほしい!」と即答したのは、
このお茶碗ひとつで、
そんな思い出の景色がぶわーっと脳裏に広がるから。
新しい器は買えても、器に重ねられた時間は買えない。


一方で、自分たちが自ら器に重ねた時間もあります。
大好きな、沖縄のやちむん。
親の影響もあってか、今でも読谷の北窯のものが一番好きです。
沖縄の力強さや土の匂い、強烈な光。
そういうものがもっとも凝縮されているような気がするから。
なにしろ、食卓に登場する回数が一番多い!
浮気をしておしゃれで繊細な器を買ってもみたけれど、
どうもしっくりこない。
巡り巡って、原点です。
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毎朝使う夫のマグカップは、たぶん10年選手。
もう何度も落として、そのたびに継がれている。
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このお皿は、なぜかいつも朝食の定番。
パンケーキをのせると、お花みたいに見えるのもお気に入り!
いずれも船や飛行機で行ったり来たり、
重ねた時間の分だけ愛着のあるうつわです。

そして、一番新しいうつわはこちら。
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昨年北窯から独立されたタムさんご夫婦の窯、
田村窯」で購入したものです。
多様化する沖縄の“やちむん”のなかで
伝統的な作風を守られていることに関して訊ねると、
「自分はこれに惹かれて沖縄に来たので」と
まっすぐな目で答えられたのが印象的でした。
すてきなご夫婦のこれからのご活躍を、
勝手ながら応援させてもらえたらなぁと思っています。

初めてお会いするのに失礼かな、と思いつつも、
普段自分が焼くお菓子をうつわに載せてもらいたくて
無理矢理置いてきてしまいました。
お菓子を焼くときいつも
なぜか「やちむんに似合うものを!」と思っていて、
それを作り手さんに渡せる喜びを勝手に満喫してしまいました。
(タムさん、ごめんなさい!そしてありがとうございました!)
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田村窯のうつわに、ドラゴンフルーツの黒糖トルテ。
ドラゴンフルーツを細かく刻んで
ブルーベリーの代わりに使ってみたら、色もきれいで
ねっとりプチプチの食感も楽しいお菓子になりました。



気がつけば、我が家の食器棚には物語のあるうつわばかり。
誰かが聞いて楽しい話ではまったくもってないけれど、
私のなかの祖母のお茶碗のように、
うつわを通して家族のなかにあたたかい温度が宿ったら、
それが何より一番うれしいことです。
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by sakurafood | 2010-09-05 15:47 | 台所にて